★世界に「殺陣抜刀術」を発信したい

 

  現在「日本刀」や「サムライ」が海外の娯楽作品の中で、よく使われる素材になっているにもかかわらず、日本国内でのサムライ映画、チャンバラ映画の製作数は激減しています。

   いわゆる「時代劇」が、ほぼ日本国内を対象とした作品として作られている以上、それは仕方のないことなのかもしれません。

   

  時代劇の見せ場に欠かせない殺陣は、日本のサムライをかっこよく表現する上で、極めて重要な技術だと私たちは思っています。

しかし時代劇の衰退とともに、殺陣を演じる現場も減り、稽古する人々も少なくなっていることは間違いありません。

 

 しかし、国内から世界に視野を広げてみたとき、娯楽活劇の要素として、日本刀を使った日本発の殺陣を活かせる場所はまだあるのではないかと私たちは考えました。

 

 

★見せる「Iai」で差別化

 もっとも娯楽映画において、殺陣はその面白さを支える一部でしかありません。

 それは百も承知の上で、私たちは殺陣に拘っています。

 

 面白い設定とそれを動かすクールな脚本があって、さらにそこにアクセントを加えるものが殺陣のクオリティです。

 

世界の娯楽活劇映画において、あまたある日本刀アクションの中で、日本発の殺陣の存在感をどうすれば示すことができるのか?

 

 そのための優れた素材は、私たちの歴史の中にありました。

 私たちは、日本のさまざまな流派の剣術、そして日本でのみ生まれた剣技である「抜刀術」に着目しました。

 

 これまでにも映画の「座頭市」や「子連れ狼」で「Iai」や「Battou」は、海外でもマニアの間では知られるようになりました。あの殺陣の「Iai」を日本の武術の居合だと勘違いしている人もいるほどです。

 

 もともと殺陣は武術から生まれた技術ではないので、本質的には両者は異質なものです。

 

 武術としての「居合」「抜刀術」は、真剣に稽古すればするほど、その術理は殺陣の在り様から遠ざかってしまいます。

 

  わかりきったことですが、殺陣は観客に夢を与えるファンタジーなのですから、本物の居合や抜刀術の演武が如何に優れたものであっても、殺陣の目指す方向とは異なっているのです。

 

 しかし私たちは、「剣術」「抜刀術」を、いわば観客のファンタジーとして殺陣にし、「演じ」て見たいと考えています。かつて座頭市は実際には存在しない「逆手居合」という技を駆使して、私たちに夢を見せてくれました。

 

「座頭市」や「子連れ狼」と自分たちを比べて語ることなどおこがましい限りではありますが、現代の厳しい製作環境の中で活動せざるをえない私たちは、もう少し異なったスタイルの「殺陣抜刀術」を考えています。

 

 その実現のために、私たちは、一度は「武術的」な稽古の入り口をくぐって、それなりのリアルな身体感覚や武術としての知識を身につけておく必要があると考えました。
  
 本来ならば、役者が日本の古流剣術の指導を受けながら、殺陣師や演出家とともに、作品に必要な殺陣シーンを作っていくことが、最も理想的なあり方かもしれません。それに近いことは、過去の大作映画の中でも既に行われてきた歴史があります。

 

 しかし、私たちは、現在の日本の若手役者の置かれている状況、小資本の製作者側の実情などを考え、実現可能な手段として、日本の古武道、古武術の稽古法から、殺陣に応用可能な部分を抽出して、武術とも従来の殺陣とも異なる独自の稽古システムを作って、まず「動ける人材」を育成するという方法を選択しました。

 

 発想を変えて、予算のかかる時代劇ではない、現代劇のジャンルでも、「設定」さえ工夫すれば、違和感なく日本刀を使った「殺陣」を作ることは可能ですから、殺陣に拘ることは、時代劇不毛の現代でも、決して無駄なことではないと思うのです。

 

 あとは、私たちの考える殺陣のスタイルや方法論が、どれだけ支持され、面白いと思ってもらえるかでしょう。

 

 

★誰でも学べる独自の稽古システム

 私たちの稽古会では、なるべく短期間で一定の「見せる抜刀術」の技術習得が可能かどうかが課題となっており、その稽古方法は現在も改良を続けています。


 稽古参加者は、最初は武術的な身体技法を学びますが、その後は武術としてではなく「殺陣」としての剣術、抜刀術の技法習得として稽古は展開していきます。


 稽古は殺陣に興味のある方であれば、年齢、性別を問わず参加できます。
  

★現場を作る同志を求めて

 私たちは、小規模ではありますが、実験的な映像製作にも取り組んできました。

 監督、カメラマン、脚本家などそれぞれの専門分野の方々の協力によって、私たちの考える殺陣をしっかりとしたストーリーと製作スタッフのもとで映像化するという試みです。

 殺陣が表現技術である以上、表現する現場、作品が必要です。

 既成の現場で私たちの殺陣は活かせるのか?

 あるいは、自分たちで、現場をつくっていくためにはどうすればよいか?
 そうした課題について、現在も試行錯誤を続けていますので、俳優、俳優志望の方で、既に何らかの武術を学んでいる方、それを従来の殺陣とは異なった身体技法、表現方法として活かすことができないかと考えている方、私たちの活動全般に関心ある方など、広く有志の参加を求めています。